近年は社会問題の一つとして、無縁仏の増加が取り上げられるようになりました。
「先祖代々のお墓があるから大丈夫」「親戚の誰かがお墓を管理するだろう」と思っていても、予想外に状況が変わって無縁化するケースがあります。無縁仏については、自分たちには関係のない話と思わず、余裕がある段階でしっかりと考えておきたいものです。
今回は無縁仏とはそもそも何なのか、無縁仏にならないために何をすべきなのかを詳しく見ていきましょう。無縁仏を回避するための選択肢についても併せて説明しますので、ぜひ参考にしてください。
無縁仏とは、葬儀や供養をしてくれる縁者がいない故人、またはそのような方が入るお墓のことです。先祖代々守られたお墓であっても、管理者がいなくなって放置されれば、いずれ無縁仏と呼ばれるようになります。
古くからある一般的なお墓というと、家単位で墓石を建てて、そこに家族や親族の遺骨を納めていく形が基本でした。しかし現在は少子高齢化の影響もあり、お墓の管理者が誰もいない状態で長年放置されるケースが増えています。
無縁仏となるのは、いったいどのようなときなのでしょうか。ここでは、無縁仏のよくある例を2パターン紹介します。
「身寄りのない方が一人で亡くなった」「身元不明で引き取り手がわからない」など、孤独死によって無縁仏となるケースです。
また、亡くなった方に家族や親族がいる場合でも、遺骨の引き取りを拒否されて無縁仏となることがあります。親族から「絶縁したので引き取りたくない」「今は疎遠だから関係ない」という声が出ることも珍しくはありません。
引き取り手がいない遺体については、地方自治体が代わりに引き取り、一連の手続きを行ないます。無縁仏の葬儀は、火葬だけの簡易的なものです。
火葬後の遺骨は一定期間を経過すると、無縁塚や合祀墓などに移され、ほかの方の遺骨と一緒に埋葬されます。この場合、のちに引き取り手が現れたとしても、遺骨を取り出して個別の墓に埋葬することはできません。
お墓を守り続ける方がいなくなり、無縁化したケースでも無縁仏となります。
お墓を使用するためには、年間管理費の継続した支払いが必要です。年間管理費は墓地のメンテナンスのために使われますが、この支払いが滞って連絡が途絶えるケースも少なくありません。
年間管理費の支払いが滞り、お墓の周辺が荒れ放題のまま放置されれば、墓地の管理者によって墓石を強制撤去されてしまいます。お墓の撤去を防ぐには、官報や立て札による告知がなされたあと、お墓の縁者や権利者が1年以内に申し出をしなくてはなりません。
縁者などによる申し出がない場合、無縁化したお墓は処分され、中に納められていた遺骨は、合祀という形でほかの遺骨とともに供養されます。お墓の撤去後に気付いたとしても、合祀墓に埋葬された遺骨をあとから引き取ることはできません。
ただしお墓の強制撤去といっても、その撤去費用を負担するのは墓地の管理者です。そのため実際には、無縁化したお墓の対処ができないまま、放置されるケースも少なくありません。
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なかには、「無縁仏になりたい」「無縁仏にするにはどうしたら良い?」などと考える方もいるでしょう。しかし亡くなったあとに無縁仏として扱われるかは、家族や周囲の方次第です。
無縁仏を希望するというより、「家族や親族と一緒のお墓に入りたくない」とのことであれば、自分が入るお墓を生前契約しておくのも一つの方法です。
永代供養付きのお墓であれば、継承者のことを気にすることなく、継続して供養してもらえます。