「先祖代々継承しているお墓を大切にしたい」という気持ちは変わらなくても、各家庭の事情によって、供養や管理が困難になるケースは少なくありません。
そもそも、改葬と墓じまいの違いは何なのか、手続きはどのように進んでいくのかなど、気になることも数多くあるでしょう。
本記事では改葬と墓じまいの違いや改葬の方法、基本の手順、費用の目安など、役立つ情報を紹介します。
近年の少子高齢化や生活スタイルの変化にともない、お墓の改葬件数は増加傾向にあります。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、2010年度の改葬件数は7万2,180件、2021年度は11万8,975件という結果でした。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)
お墓の改葬が増えている理由はさまざまですが、おもな理由としては、以下のような事情が挙げられます。
● お墓を管理する後継者がいない
● お墓から遠い場所に住むことになった
● 高齢でお墓参りができなくなった
上記のほか、最初にお墓を建てた方の考えと、それを引き継ぐ方たちの考えが一致しない、といったこともあるでしょう。こうした背景があり、将来のことを考えたうえで、お墓の場所を移動したり、一般墓から樹木葬や永代供養墓に移したりする方が増えているのです。
改葬と墓じまいは混同されやすい言葉ですが、本来の意味は異なります。
改葬とは、お墓を引越して別の場所に移すことです。一方の墓じまいは、お墓を撤去して更地にし、お墓の使用権を管理者に返還することを意味します。
改葬手続きの一部に墓じまいが含まれる、というイメージです。
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改葬の方法として多いのは、遺骨のみを新しいお墓に移すケースです。石碑については、新しく購入するケースと、これまで使っていた石碑を遺骨と一緒に移動させるケースがあります。石碑を移動させる場合は、運搬費の負担がある点に注意が必要です。
複数人分の遺骨が埋葬されているなら、すべての遺骨を移動させる、もしくは遺骨の一部だけを移動する形となります。
改葬を行なう前に、墓じまいから納骨までのおおまかな流れを確認しておきましょう。
改葬は、自分たちの都合で勝手に行なうことはできません。改葬することを決めたら、まずは霊園・墓地の管理者にその旨を伝えましょう。改葬の日程について急に相談するよりは、検討中の段階から早めに説明しておくほうが丁寧です。
家族や親族との話し合いを済ませてから、改葬先の霊園・墓地を決定します。管理者との打ち合わせを行ない、納骨の日程や費用について確認しましょう。
改葬元と改葬先、自治体から必要書類(改葬許可書、受入許可書など)を取得して手続きを行ないます。自治体ごとに必要書類の詳細が異なるため、改葬の手続きを始める前に確認しておくとスムーズです。
遺骨を取り出す際には、専門業者に依頼して石碑を動かしてもらうのが一般的です。遺骨を取り出したあと、石碑に宿っている魂を抜くために、閉眼供養(抜魂式、御魂抜き)などの儀式を行ないます。
改葬先に埋葬する前に、遺骨の洗浄を行ないます。これは、年月の経過によって遺骨の状態が悪くなり、カビや虫が発生している場合があるためです。
遺骨の状態を整えたあと、改葬先に遺骨を納めます。僧侶による納骨式や開眼供養が執り行なわれたら、改葬手続きは完了です。
改葬にかかる費用の内訳は、以下のとおりです。
【墓じまい~遺骨の移動にかかる費用】
● 墓石の撤去費用:1平方メートルあたり10~20万円程度
● 離檀料:3~20万円程度
● 閉眼供養のお布施:2~5万円程度
● 改葬許可証:0円~1,000円程度
● 遺骨の移動にかかる費用:1,000円程度
【改葬先でかかる費用】
● 新しいお墓の費用(一般墓):100万円~
● 新しいお墓の費用(樹木葬):10万円~
● 新しいお墓の費用(永代供養墓):10万円~
● 開眼供養のお布施:3~10万円程度
改葬の費用を大きく左右するのは、新しいお墓の費用です。自分たちだけでなく、子どもや孫にも関わってくる問題ですので、将来の継承をふまえて納骨の方法を決定する必要があるでしょう。
お布施については、地域ごとに包む金額やマナーが異なります。わからない場合は寺院に直接相談するか、周囲の人に相場を確認してみましょう。