「先祖代々継承しているお墓を大切にしたい」という気持ちは変わらなくても、各家庭の事情によって、供養や管理が困難になるケースは少なくありません。
そもそも、改葬と墓じまいの違いは何なのか、手続きはどのように進んでいくのかなど、気になることも数多くあるでしょう。
本記事では改葬と墓じまいの違いや改葬の方法、納骨までの手順や費用など、役立つ情報を紹介します。改葬のよくあるトラブルについてもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
近年の少子高齢化や生活スタイルの変化にともない、お墓の改葬件数は増加傾向にあります。
厚生労働省の「衛生行政報告例」によると、2010年度の改葬件数は7万2,180件、2021年度は11万8,975件、2023年度は16万6,886件という結果でした。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)
お墓の改葬が増えている理由はさまざまですが、おもな理由としては、以下のような事情が挙げられます。
● お墓を管理する後継者がいない
● お墓から遠い場所に住むことになった
● 高齢でお墓参りができなくなった
上記のほか、最初にお墓を建てた方の考えと、それを引き継ぐ方たちの考えが一致しない、といったこともあるでしょう。こうした背景があり、将来のことを考えたうえで、お墓の場所を移動したり、一般墓から樹木葬や永代供養墓に移したりする方が増えているのです。
改葬と墓じまいは混同されやすい言葉ですが、本来の意味は異なります。
改葬とは、お墓を引越して別の場所に移すことです。一方の墓じまいは、お墓を撤去して更地にし、お墓の使用権を管理者に返還することを意味します。
改葬手続きの一部に墓じまいが含まれる、というイメージです。
関連記事:墓じまいとは?基本の手順や費用相場、永代供養付きのお墓の種類を紹介
改葬の方法として多いのは、遺骨のみを新しいお墓に移すケースです。石碑については、新しく購入するケースと、これまで使っていた石碑を遺骨と一緒に移動させるケースがあります。石碑を移動させる場合は、運搬費の負担がある点に注意が必要です。
複数人分の遺骨が埋葬されているなら、すべての遺骨を移動させる、もしくは遺骨の一部だけを移動する形となります。
改葬を行なう前に、墓じまいから納骨までのおおまかな流れを確認しておきましょう。
改葬は、自分たちの都合で勝手に行なうことはできません。改葬することを決めたら、まずは霊園・墓地の管理者にその旨を伝えましょう。改葬の日程について急に相談するよりは、検討中の段階から早めに説明しておくほうが丁寧です。
家族や親族との話し合いを済ませてから、改葬先の霊園・墓地を決定します。管理者との打ち合わせを行ない、納骨の日程や費用について確認しましょう。
改葬元と改葬先、自治体から必要書類(改葬許可書、受入許可書など)を取得して手続きを行ないます。自治体ごとに必要書類の詳細が異なるため、改葬の手続きを始める前に確認しておくとスムーズです。
具体的な改葬の手続き、改葬許可申請に関しては、以下の記事をご覧ください。
関連記事:改葬許可証とは?申請時の3つの必要書類やよくある疑問、注意点を紹介
遺骨を取り出す際には、専門業者に依頼して石碑を動かしてもらうのが一般的です。遺骨を取り出したあと、石碑に宿っている魂を抜くために、閉眼供養(抜魂式、御魂抜き)などの儀式を行ないます。
改葬先に埋葬する前に、遺骨の洗浄を行ないます。これは、年月の経過によって遺骨の状態が悪くなり、カビや虫が発生している場合があるためです。
遺骨の状態を整えたあと、改葬先に遺骨を納めます。僧侶による納骨式や開眼供養が執り行なわれたら、改葬手続きは完了です。
関連記事:開眼供養・開眼法要とは?お布施、のし袋の書き方、準備内容などを解説
ここでは、改葬にかかる期間と費用、自治体や霊園の補助金制度について説明します。
改葬が完了するまで、2ヵ月~6ヵ月程度かかります。家族や親族に改葬について相談したり、新しいお墓を探して現地見学をしたりするのにも時間が必要です。
改葬元と改葬先から書類を取得したあと、自治体に改葬許可申請を出します。申請が認められると改葬許可証が発行されますが、自治体によって発行されるまでの期間が異なるため注意が必要です。
即日交付の自治体もあれば、10日程度かかる場合もあるため、詳細については、各自治体のWebサイトで確認しましょう。郵送申請の場合、書類に不備があった場合は、通常時よりもさらに時間がかかります。
改葬にかかる費用の内訳は、以下のとおりです。
【墓じまい~遺骨の移動にかかる費用】
【改葬先でかかる費用】
改葬の費用を大きく左右するのは、新しいお墓の費用です。自分たちだけでなく、子どもや孫にも関わってくる問題ですので、将来の継承をふまえて納骨の方法を決定する必要があるでしょう。
お布施については、地域ごとに包む金額やマナーが異なります。わからない場合は寺院に直接相談するか、周囲の人に相場を確認してみましょう。
自治体や霊園によっては、独自の補助金制度を利用できる場合があります。
補助金制度の例は、以下のとおりです。
無縁墓は、自治体や霊園にとっても大きな問題となっています。そのため、過去には補助金制度がなくても、今後新たに実施される可能性があります。改葬を予定しているなら、まずは自治体や霊園のWebサイトから、利用できる補助金制度がないかを確認してみましょう。
改葬の費用をできるだけ抑えたい方には、樹木葬と永代供養墓がおすすめです。
樹木葬とは、墓石ではなく樹木や草花をシンボルとするお墓のことです。歴史の浅い供養方法ではありますが、近年注目を集めています。
草花で彩られたガーデン風や、1本の樹木のまわりに遺骨を埋葬するタイプなど、そのスタイルはさまざまです。また、複数人入れる家族向けのものや、1~2人用のコンパクトなものなど、埋葬する人数に合わせて選ぶこともできます。
樹木葬のなかでも特に費用が安いのは、合祀型樹木葬(5~20万円程度)です。ただし、ほかの契約者とともに埋葬されるため、遺骨をあとから取り出すことはできません。
遺骨を分けておきたいなら、集合型樹木葬(15~60万円程度)、個別型樹木葬(20~150万円程度)を選択しましょう。
関連記事:樹木葬の費用相場とは?内訳と契約時の注意点、金額を抑える5つのポイントを解説
永代供養墓とは、お墓の管理を霊園・墓地の管理者に任せるお墓のことです。継承者が不要であること、管理費や維持費の負担がない場合もあることから、近年、永代供養墓を選ぶ方が増えています。
永代供養墓には、一定期間は個別で安置できるタイプ(単独墓、集合墓など)と、最初からほかの契約者と一緒に埋葬されるタイプ(合祀墓)があります。
費用については、単独墓が30~150万円程度、集合墓が10~60万円程度、合祀墓は5~30万円程度です。改葬の費用を安くしたい方は、合祀墓から検討してみるとよいでしょう。
関連記事:永代供養墓の費用相場と内訳を全解説!墓じまいの料金、支払い方法なども紹介
ここでは、改葬手続きに関するよくある疑問にお答えします。
土葬されていた遺骨の場合は、火葬してから新たな埋葬先に移す形となります。遺骨の洗浄と火葬が必要になるため、通常の改葬とは手順が異なる点に注意が必要です。あらかじめ、土葬からの改葬に対応できる専門業者を探しておきましょう。
なお、すでに遺骨が土に還っている場合は、改葬手続きは必要ありません。この場合は、遺体が埋葬されていた場所の土を骨壺に入れて、新しい埋葬先へと移します。
既存の墓石を改葬先に移すこともできますが、対応できる霊園・墓地が限られます。既存の墓石をそのまま使用したい場合は、持ち込み可能な霊園・墓地を見つけるところから始めましょう。
持ち込み可能な霊園・墓地であっても、墓石の再加工が必要な場合があるため、改葬先の条件の確認が大切です。
電車やバス、新幹線、飛行機など、公共交通機関を利用する際は、周囲の方への配慮が重要です。骨壺であることがわからないよう、バッグなどに入れて運びます。
飛行機でも遺骨を運ぶことはできますが、航空会社ごとにルールが多少異なるため注意が必要です。火葬許可証や埋葬許可証などの提示が必要になる場合もあるため、事前に問い合わせを行なったほうがよいでしょう。
自分で遺骨を運ばず、郵便局の「ゆうパック」で郵送する手もあります。途中で骨壺が割れないか心配な場合は、専用の梱包セットを使うと安心です。
「改葬しようとお墓を確認したら、思っていた以上の数の遺骨が納められていた」という例もあります。予定していた改葬先に遺骨をすべて納められないとき、まずは親族間で遺骨の引越し先について話し合いましょう。
「すべての遺骨を同じ改葬先に移す」「改葬先を複数用意して別々に埋葬する」など、さまざまな選択肢があります。すべての遺骨を納骨するにはスペースが小さい場合は、遺骨を粉骨して体積を減らすことも可能です。
ただし、合祀墓に一度埋葬してほかの遺骨と混ざったり、遺骨をパウダー化したりすれば、元の状態に戻すことはできません。合祀や粉骨を行なう場合は、より慎重な判断が求められるでしょう。
分骨とは、故人の遺骨の一部を取り分けて、複数の場所で供養することです。分骨した遺骨は別のお墓に納めるほか、手元供養をされる場合もあります。
既存のお墓に埋葬されている遺骨を分骨する際は、その墓地・霊園の管理者にその旨を伝え、分骨証明書の交付を受けましょう。なお、一部の遺骨を移動させたとしても、本骨が元のお墓にある場合、改葬手続きは不要です。
お墓の引越しを行なう際、新しいお墓の完成に時間がかかり、すぐに遺骨を納められない場合があります。改葬先の墓地・霊園で遺骨を保管してもらえる場合は、完成するまで預かってもらうとよいでしょう。
改葬先のお墓が完成するまで、一時的に遺骨を自宅で保管しても問題ありません。ただし、自宅の庭にお墓を作って埋めるなど、勝手に埋葬するのはNGです。自宅の仏壇や棚の上など、手を合わせやすい場所に安置します。
自宅で遺骨を一時的に保管する際は、カビが生えないよう注意が必要です。キッチンや洗面所、浴室など、湿気の多い水回り付近には置かないようにしましょう。直射日光の当たる窓辺は避けて、風通しの良い場所で保管します。
「先祖代々のお墓を改葬するなんて……」という考えの方もいますが、思い切って改葬することで費用や管理の負担を軽減できるメリットもあります。
大切なのは、親や自分たちの都合だけで判断しないことです。お墓を受け継いでいく子や孫など、あとの世代のこともよく考えましょう。
今のお墓をそのまま維持したとしても、別のところに改葬したとしても、お墓を管理する人がいなければ、いつかは無縁墓となってしまいます。
ただし、焦って決める必要はありません。メリットとデメリットの両方を理解したうえで、納得できる答えを出しましょう。
今あるお墓の管理で悩まれているなら、選択肢の一つとして改葬を考えてみてはいかがでしょうか。お墓の引越しを進める際は、改葬手続きの流れを確認のうえ、寺院や家族とよく話し合ってから手続きを進めてください。
お墓の場所が遠いなら通いやすい近くのお墓に、お墓の継承で悩んでいるなら永代供養のお墓に改葬をすることで、お墓で眠る大切な方やご先祖様をより身近に感じられるかもしれません。
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