お墓を購入する際に多くの方が気になるのが、実際にかかる費用の詳細でしょう。「立派な墓石にしたい」「管理を代行してほしい」「通いやすい立地が良い」など、お墓に求める条件は多々ありますが、予算とのバランスも考えなくてはなりません。
本記事では、お墓の購入時やその後にかかる費用相場、値段を決める要素、お墓の費用目安について解説します。また、購入費用をできるだけ安くするコツについても紹介するので、お墓選びで迷っている方はぜひ参考にしてください。
お墓の購入にかかる費用の内訳は、「墓石代」「永代使用料」「年間管理費」の3つです。これらの3つが基本的な費用ですが、上記以外の費用が必要になることもあります。お墓の種類やグレード、オプションによって差はあるものの、総額で100万円～350万円程度となるでしょう。
墓石代は、墓石の形状、大きさ、産地によって価格が異なります。墓石代の費用相場は、およそ50万円～200万円です。
墓石の価格だけでなく、工事費や彫刻にかかる費用も用意しておきましょう。
なお、工事をしにくい場所や墓石を運搬しづらい場所にお墓を建てる場合は、工事費も割高になる傾向にあります。予算オーバーを避けるためにも、墓石の価格だけでなく、工事費や付属品の費用についても事前に確認しておくことが大切です。
永代使用料とは、墓地の使用権を購入する費用のことです。永代使用料を支払うことで、お墓を後世まで引き継げるようになります。
墓地を永代にわたって利用できますが、墓地の所有権を得られるわけではありません。墓地が不要となったときには返却する必要があり、第三者への貸出・転売などはできません。
永代使用料の費用相場は、50万円～150万円程度です。運営主体や地域、スペースの広さによっても費用が異なるので、お墓を比較検討する際にしっかりと確認しておきましょう。
◇お墓の費用（3）年間管理費
年間管理費とは、管理者に支払う墓地のメンテナンス費用のことです。墓所を適切に管理するためには、水道代や電気代、設備の修繕費、清掃代などが必要となります。年間管理費の費用相場は、おおよそ5,000円～1万5,000円です。
管理費を支払うタイミングは霊園・寺院にもよりますが、年に1度の支払いとなるケースが多いでしょう。なお、近年注目を集めている生前墓の場合は、納骨の前から年間管理費が必要となることがあります。
関連記事：お墓の管理費・維持費はいくら必要？金額の目安とよくあるQ＆Aを紹介
続いては、法要の際に支払うお布施など、お墓を建てたあとに必要な費用について説明します。
開眼供養（開眼法要）とは、墓石に亡くなった方の魂を入れる儀式のことです。この儀式を行なうことで、普通の石を「墓石」として使えるようになります。
開眼供養を僧侶に依頼する際のお布施に決まった金額はありませんが、3万円～5万円程度が相場です。
お墓や納骨堂に、亡くなった方の遺骨を埋葬する儀式のことを「納骨式（納骨法要）」といいます。納骨式は、開眼供養やほかの法要と同時に行なわれることもあります。
納骨式のお布施の費用相場は3万円～5万円、開眼供養と同時に行なう場合は5万円～10万円程度です。
故人の遺骨は、お墓の「カロート（納骨室）」に納めます。このカロートの蓋を取り外して納骨する際の作業料金が「納骨作業料」です。
カロートの蓋は重量があるため、慣れていない方が作業をすると、ケガをするおそれがあります。よって多くの場合、霊園のスタッフや石材店の業者などに作業を依頼します。なお、納骨作業料の相場は、5万円程度です。
寺院墓地を利用する場合は、基本的にはその寺院の檀家になる必要があるため、「入檀料」を納めます。入檀料は「気持ち」とされているので金額の決まりはないですが、目安は10万円～30万円程度です。ただし、入檀料は寺院や宗派によって変わるため、あらかじめ確認したほうがよいでしょう。
檀家になると、葬儀や法要について僧侶に直接相談できたり、読経による手厚い供養を優先的に受けられたりします。
寺院墓地を利用する方は、護持会費や離檀料などの費用についても、確認しておきましょう。
関連記事：寺院墓地とは？お寺にお墓を建てる場合のトラブル例も紹介
お墓の値段を左右するおもな要素は、以下のとおりです。
・立地
・利用区画の広さ
・石の種類・産地
・石の使用量
・彫刻
・加工
・デザイン
・墓石以外の付属品
お墓の墓地代は、そのお墓がある地域の地価に比例します。基本的には都市部は墓地代が高く、地方に行くほど安くなる傾向にあります。
気になるお墓を見つけたら、地価だけでなく、墓地までの運搬費にも注目してみましょう。お墓を建てる場所が区画整理された場所であるか、山間部であるかによって、必要な費用が変わってきます。
お墓の規模としては似たようなものであっても、山間部の墓地のほうが石材や機材の運搬費がかさむものです。そもそもトラックが入れるような道がなければ、新たに道を開く必要性も出てきます。
ほかにも、幹線道路が近い場所は振動に耐えうる石材、潮風が当たる地域は塩害に強い石材が必要です。このようにお墓の立地によって、運搬費や石材の種類に影響が出ることを理解しておきましょう。
利用区画が広いほど、墓地の使用料が高くなります。墓地を検討する際は、そこに墓石を建てたときのイメージを持ちましょう。
実際の墓地を見ながら、利用区画の広さと墓石のサイズが適切なバランスであるかを確認したいところです。値段を抑えたいなら、狭い区画に小さな墓石を建てることも検討しましょう。
墓石の値段は、使用する石材の種類によって大きく変動します。等級が高いものほど高価ですが、人気にも左右されるため一概にはいえません。
墓石は長年風雨にさらされるものですので、硬度が高くて吸水性が低い、耐久性に優れた石材が適しています。
なお、現在は中国やインドからの輸入石材が広く使われています。その石材の人気度にもよりますが、傾向として海外産よりも国産の石材のほうが価格は高めです。
石の使用量が多いほど、最終的なお墓の価格が高くなります。このとき、単に墓石の大きさだけでなくデザインにも注目する必要があるでしょう。
凝った形のお墓を作る際、まずはブロック状の石材を切り出してから、希望の形になるように削っていきます。この場合はできあがりの墓石のサイズではなく、加工前の石の大きさで価格が決まる点に注意が必要です。
また、希少な石であれば大きな石を採取しづらいため、墓石が大きくなるほど割高となります。
墓石に刻む文字や模様が増えるほど、またデザインが細かくなるほど値段が高くなります。彫刻の例としては、以下のとおりです。
・家名（「○○家之墓」「○○家」など）
・題目（「南無妙法蓮華経」「南無阿弥陀仏」など）
・戒名（法名・法号・俗名）
・没年月日・没年齢
・お墓の建年号
・建立者名
・家紋
・故人が好きだった文字、詩、イラスト
・花や風景などの装飾
墓石に入れる彫刻に関しては、その家を象徴するイラスト、故人への想いを込めた言葉など、お墓の建立者が自由に決められます。墓石に彫刻を施したい場合は、石材店に相談して見積もりをもらいましょう。
凹凸や曲線の多い洋型墓石・デザイン墓石のように、複雑な加工を施すほど加工費が高くなります。
国内加工の墓石よりも、職人の人件費が安い外国加工の墓石のほうが、値段が安い傾向にあります。海外で加工される場合は、中国での加工が大半です。
なお、国内で砕石されて中国に送られ、中国で加工された墓石も、「国産墓石」として扱われます。
墓石をデザイン別に分類すると、和型・洋型・デザイン型の3種類に大別されます。このなかで価格が高いのは、凝った装飾の多いデザイン型です。洋型と和型では、デザインや加工にもよりますが、洋型のほうが高めになる傾向があります。
デザイン墓石には、すでにデザインが完成している既製品、独自のデザインを注文できるオーダーメイド品の2種類があります。オーダーメイド品のなかでも、完全にゼロからデザインを作る方法と、既存のサンプルにアレンジを加えていく方法があります。
オーダーメイドのデザイン墓石は、ほかと比べて高価です。ただし石材のサイズやデザインにもよるので、予算内に収まるよう石材店と相談してみましょう。
墓誌・外柵・灯篭・卒塔婆立てなど、墓石以外の付属品の有無によっても、お墓の値段が変わります。これらの付属品は、供養に必須のものではありません。
なお、外柵は利用区画が広いほど値段が高くなります。外柵を設けるメリットは以下のとおりです。
・隣の墓地との境界が明確になる
・納骨室が高くなり、水が溜まりにくくなる
・墓石が高くなって見栄えが良くなる
・ほかの霊が入り込むのを避ける
外柵をなくすこともできますが、上記のような理由から、外柵を付けるケースがほとんどです。
お墓の値段を調べようとしても、明確な値段を掲載していない石材店が大半です。ホームページやチラシと実際の金額が違うことも多々ありますが、これには理由があります。
お墓を建てる際には、墓石代だけでなく工事費が必要です。墓地の状況や周辺環境など、さまざまな条件が影響して、最終的な金額が決まります。
最終的なお墓の値段は、実際に現地を見てみないとわかりません。トラックや重機は入れるのか、地盤の状態はどうなのか、といった点をチェックしてから、ようやく正確な見積もりを出せるようになるのです。
費用に関して不安な方は、石材店へ相談する前に、予算の上限をあらかじめ決めておくとよいでしょう。何にこだわりたいかを整理しておくと、プランを決める際もスムーズに進みます。
ここからは、お墓の値段の目安について、条件別に紹介します。
なお、下記の金額はおおまかな目安です。立地・墓石の値段・デザインなどの条件によって金額は変動します。実際の金額については、石材店に相談して見積もりを出してもらいましょう。
・基石の産地：国産
・区画の広さ：3.8㎡
・彫刻・加工の有無：あり
・付属品の設置：あり（外柵・墓誌など）
⇒費用目安：500万円
【内訳】
永代使用料：220万円
工事費：110万円
彫刻・加工代：20万円
付属品代：150万円
・基石の産地：国産
・区画の広さ：1.0㎡
・彫刻・加工の有無：なし
・付属品の設置：なし
⇒費用目安：200万円
【内訳】
永代使用料：55万円
工事費：145万円
・基石の産地：中国産
・区画の広さ：1.0㎡
・彫刻・加工の有無：なし
・付属品の設置：なし
⇒費用目安：100万円
【内訳】
永代使用料：40万円
工事費：60万円
お墓の費用負担が気になる方は、以下の点を押さえておきましょう。
お墓の費用負担を減らしたい方は、比較的費用の安い公営霊園から条件の合うところを探してみましょう。
ただし、公営墓地は募集期間が限られており、応募者多数の場合は抽選に当たらないと利用できません。また、広い面積の墓所しか空いておらず、結局費用が高くなるケースもあります。
さらには、「墓地のある自治体に住所地がある」「生前予約は不可」など、申し込み条件が厳しい場合もあるので、よく確認したほうがよいでしょう。公営墓地の詳細は、以下の記事をご確認ください。
関連記事：公営墓地とは？寺院・民営との違いや申し込み手順を紹介
お墓にかかる費用のなかでは、墓石代が大きな割合を占めます。価格をなるべく抑えたい方は、外国産の石材を使用したものや、小さめでシンプルなデザインのものを選ぶとよいでしょう。
また、石材の価格は産地によって変動しますが、価格と石材の品質が必ずしも比例するわけではありません。実際のところ、高品質で値段の安い石材もあります。見た目や産地だけでは判断できない場合もあるので、気になることがあれば石材店に尋ねてみましょう。
さらにアウトレット品のように、お得な石材が販売されているケースもあります。ただし、せっかく石材を安く購入できても、高度な加工技術を要するデザインを求める場合には、費用も高額になりがちです。希望の条件や予算を伝えたうえで、石材店のアドバイスをもらいながら、最終的な決断をすることをおすすめします。
同じような規模のお墓であっても、墓地の地域や立地によって価格に差が出ます。例えば、「都市部にある」「駅近で利便性が高い」「周辺に人気の施設や店舗がある」といった好条件の墓地は、費用も高額になりやすいです。
基本的にはその土地の値段に比例するため、都内よりも地方の墓地を選んだほうが費用を節約できるでしょう。希望する立地で予算オーバーになるときは、地域を変えて再検討してみるのがおすすめです。
地域を変えられない場合や、利便性を重視したい場合は、墓地の区画を小さくするなどして費用を抑えられないか、検討してみましょう。
納骨堂、永代供養墓、樹木葬など、一般墓以外のお墓を選ぶことで、費用負担を軽減できる場合もあります。
墓石を建てない、ほかの人と一緒に埋葬する、年間管理料が不要なお墓を選ぶなど、費用を抑える方法は多数あります。「先祖代々のお墓がない」「事情があって負担を最小限にしたい」という場合には、こういった選択肢も検討してみましょう。
納骨堂、永代供養墓、樹木葬のそれぞれの費用目安は、以下のとおりです。
【納骨堂の費用相場】
・位牌型：10万円～
・ロッカー型：20万円～
・仏壇型：個人用30万円～、家族用100万円～
・自動搬送型：50～100万円程度
・墓石型：100～200万円程度
【永代供養墓の費用相場】
・単独墓（個別墓）：30万円～150万円程度
・集合墓：10万円～60万円程度
・合祀墓（合葬墓・共同墓）：5万円～30万円程度
【樹木葬の費用相場】
・個別型：20～150万円程度
・集合型：15～60万円程度
・合祀型：5～20万円程度
上記のとおり、5～10万円程度の金額からお墓を利用できます。合祀型は比較的安価ですが、ほかの方と同じ区画に埋葬しても問題ないか、契約前に家族とよく話し合っておきましょう。
またお墓参りの際に手を合わせる対象も、個別の墓石や仏壇、位牌、樹木などさまざまです。それぞれのお墓の特徴や費用について知りたい方や、お墓の費用をなるべく抑えたい方は、以下の記事を併せてご覧ください。
関連記事：
納骨堂にかかる費用とは？種類別の費用相場、金額を安くする方法を解説
永代供養墓の費用相場と内訳を全解説！墓じまいや選び方のポイントも紹介
樹木葬の費用相場とは？その内訳と金額を抑える5つのポイントを解説
お墓を購入する際には、複数の石材店から見積もりをもらうようにしましょう。
ただし、利用する霊園・墓地によっては、石材店を自由に選べないケースがあるので注意が必要です。インターネット上でも墓石のおおまかな相場を確認できるので、事前の情報収集をすませてから、石材店に問い合わせることをおすすめします。
なお、多くの民間霊園や寺院墓地では、依頼できる石材店があらかじめ決められています。複数の指定石材店がある場合も、基本的には最初にやり取りを開始した石材店と、そのまま契約を結ぶケースが多いでしょう。よって、複数の石材店を比較したい方は、自由に石材店を選択できる公営墓地の検討がおすすめです。
また、石材店を選ぶ際は、石材の価格だけでなく、担当者の対応やアフターサービスの内容など確認すべきポイントが多々あります。石材店の選び方については、以下の記事をご確認ください。
関連記事：石材店の選び方を徹底解説！墓石を建てる際に知っておきたいポイント6選
お墓用の石材は、交渉次第で値引きしてもらえる可能性があります。また提案された商品が予算を超えていた場合、石材のグレードやデザインを変更することで、費用を抑えられるかもしれません。
墓石代を安く抑えたい方は、石材店との交渉に入る前に、石材の知識を取り入れておくとよいでしょう。
交渉した際の値引き幅があまりにも大きい場合は、もともと高額な価格設定であった可能性が高いと考えられます。もしくは大幅な値引きの結果、質の低い石材を使われたり、手抜き工事をされたりするケースもあります。
また、ほかの石材店との価格差が大きすぎる場合も注意が必要です。口コミや担当者の対応などを総合的に見て、信頼できる店であるかを判断しましょう。
お墓について詳しく知らないうちは、何にどれくらいの費用がかかるか見当もつかず、不安になってしまうかもしれません。お墓にかかる費用相場と内訳、値段を左右する要素を知っておけば、どの部分を節約すべきなのか、自分たちに必要なお墓はどれなのかが見えてきます。
墓石代に関しては、指定石材店の仕組みを理解することや複数の石材店から見積もりをもらうこと、石材について調べてから交渉することが大切です。たとえ高すぎる見積もりを提示されたとしても、一般的な相場を知っていれば適切に対処できます。事前準備をしっかりして、納得のできるお墓を選びましょう。
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